お仏壇の飾り方は宗派によって異なります
お仏壇の中をよく見てみると、たくさんのお仏具が飾ってあることに気がつきます。
「この中で、どのお仏具がかならず必要なのだろう?」
いざ、お仏壇をご用意される立場になった際に、悩まれる方も多いのではないでしょうか。
お仏壇の飾り方や必要なお仏具の種類には、ご宗派によって少しずつ違いがあります。
また、現在ではお仏壇自体の種類も、伝統的な金仏壇や唐木仏壇、リビングなどにあうモダン仏壇など多様化しています。それにあわせてお仏壇の飾り方も、より伝統的で正式に近い飾り方からシンプルにアレンジされた飾り方まで多様化しています。
今回は、どのようなタイプのお仏壇にも対応する、浄土真宗のお仏壇のもっとも基本的な飾り方を、ご紹介していきます。
浄土真宗のお仏壇の正式な飾り方については、次回以降あらためてご紹介していきます。
浄土真宗の本山御用達の仏壇仏具店として
若林佛具製作所は、天保元年(1830年)に、ここ京都の地にて創業しました。
以来今日に至るまで、東本願寺や西本願寺、佛光寺など、主に浄土真宗のお寺様にたくさんのご縁をいただき、多くの仕事をさせていただいております。
そのような中で、積み重ねてきた豊富な経験と知識を持っていることが、私たち若林佛具製作所のひとつの強みとなっています。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 ご本尊
浄土真宗のお仏壇のご本尊は、「阿弥陀如来」となります。
浄土真宗の阿弥陀如来は、彫刻の木像と掛軸の絵像があります。いずれも48本の御光が差し、蓮のかたちを模した台座に立っているお姿です。
少し前かがみのお姿は、阿弥陀如来の慈悲によって、私たちを救済しようとしている姿をあらわしているといわれています。
ご本尊は、お仏壇の中のもっとも上段の奥、真ん中の位置に置きます。
浄土真宗ではお仏壇のご本尊を、仏像ではなく掛軸でご用意していただくことが奨励されています。
掛軸は仏壇店で販売しているものでも用意ができますが、浄土真宗の各派のご本山で「免物(めんもつ)」または「授与品」として受けるものが、より正式なものと考えられています。
そのほか、同じ浄土真宗の中でも各派によって、仏像の姿や掛軸の描かれ方が異なります。ご本尊をご用意される際には、お寺様や仏壇店にご相談していただくことをおすすめします。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 過去帳
浄土真宗は、位牌を用いない宗派です。
「浄土真宗はお位牌を作らない?浄土真宗の教えから考える」はこちらhttps://www.wakabayashi.co.jp/homeuse/journal/jodoshinshuhaihaiwotsukuranai/
なぜなら、浄土真宗では「人はみな亡くなると浄土でみ仏に生まれかわる」と考えられており、位牌の中に亡くなった方の魂が宿るとは考えられていないからです。
浄土真宗では位牌は用いませんが、亡くなった方の記録を「過去帳」と呼ばれる記録帳に書き記します。
書き方に特別な決まりはありませんが、一般的に「法名」「俗名」「亡くなられた年月日」「亡くなられた時の年齢」を記入することが多いです。
記入は、過去帳をご用意される方ご自身か、お寺様に書いていただきます。
また、過去帳の代わりに「法名軸」と呼ばれる本紙が空白になっている掛軸に法名を書き、お仏壇の中に掛ける場合もあります。
お仏壇の中で過去帳を安置する位置ですが、もっとも上段以外であれば特別に決まった位置はありません。
お仏壇の大きさや、そのほかのお仏具とのバランスを見ていただき、ご本尊が隠れないように配慮しながら置きやすい位置を選んでください。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 仏飯器(ぶっぱんき)
浄土真宗のお仏壇では、「仏飯器(ぶっぱんき)」とよばれる器にご飯をいれてお供えをします。
ご飯はできる限り、炊いた最初のご飯をお供えしていただくことが望ましいと考えられています。
お仏壇の中で仏飯器を飾る位置は、ご本尊の正面が一般的です。ただし、現在ではいろいろな形のお仏壇が存在しますので、お仏壇の大きさやデザインにあわせて飾りやすい位置を選んでください。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 三具足(みつぐそく)
お仏壇に飾る「三具足(みつぐそく)」とは、花を生ける「花瓶」、蝋燭を灯す「蠟燭立」、香を焚く「香炉」がセットになった仏具のことをいいます。
浄土真宗を含め仏教では、ご本尊をお迎えするためにこの三具足がもっとも大切で最低限必要な仏具だと考えられています。そのため、三具足はお仏壇をご用意する際、まずご用意していただきたい仏具になります。
以下で、三具足の「花瓶」「蝋燭立」「香炉」について、もう少しくわしく触れていきます。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 花瓶
三具足のうちの1つが「花瓶」です。花瓶のことを、「花立(はなたて)」と呼ぶこともあります。
花瓶は花を生けるために用意します。浄土真宗の考え方では、花は阿弥陀如来の慈悲(じひ)をあらわしているといわれています。
法要時のお仏壇の飾り方の五具足になると、お仏壇に飾る花瓶は1対(2つ)で用意しますが、平時は半対(1つ)でご用意していただきます。
花瓶は、三具足の中のむかって左脇に飾ります。ただし、現在ではいろいろな形のお仏壇が存在しますので、お仏壇の大きさやデザインにあわせて飾りやすい位置を選んでください。
供える花の種類に特別な決まりはありませんが、仏教では「とげのある花は飾らない」という考え方もあります。そのため、バラの花は避けられる方がよいでしょう。また、毒のある花も避けてください。
浄土真宗のお仏壇の基本の飾り方 蝋燭立
三具足のうちの1つが「蝋燭立」です。蝋燭立は「火灯(ひともし)」や「燭台(しょくだい)」と呼ぶこともあります。
蝋燭立は、蝋燭に明かりを灯すために用意します。灯明は、阿弥陀如来の智慧(ちえ)をあらわしているといわれています。
法要時のお仏壇の飾り方の五具足になると、お仏壇に飾る蝋燭立は1対(2つ)でご用意しますが、平時は半対(1つ)でご用意していただきます。
蝋燭立は三具足の中のむかって右脇に飾ります。ただし、現在では、いろいろな形のお仏壇が存在しますので、お仏壇の大きさやデザインにあわせて、飾りやすい位置を選んでください。
また、火を灯す際は安全のために、お仏壇の中より手前側でご使用になる事をお勧めします。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 香炉
浄土真宗のお仏壇で用意する三具足のうちの1つが「香炉」です。
香炉は、線香や香を焚くためのものです。線香や香は「手を合わせる方の身を清め、お浄土の清浄な空気、阿弥陀如来の智慧(ちえ)の広がりをあらわしている」といわれています。
浄土真宗特有の作法として、線香を供える際に香炉に立てるのではなく、香炉の口に収まるように、寝かせて線香を供えます。線香の長さが香炉の口径よりも長い場合には、線香を寝かすことができる長さまで折り、供えます。
香炉は、三具足の中の中央部分に飾ります。ただし、現在では、いろいろな形のお仏壇が存在しますので、お仏壇の大きさやデザインにあわせて、飾りやすい位置を選んでください。
また、火を灯す際は安全のために、お仏壇の中より手前側でご使用になる事をお勧めします。
浄土真宗のお仏壇の飾り方 おりん
お仏具には、いろいろな種類の鳴りものがあります。
浄土真宗のお仏壇で使うものは、「おりん」と呼ばれる、金属でできた半円形の鐘のみになります。(現在では半円形のものだけではなく、いろいろな形のおりんが存在します。)
おりんは本来、お経を誦む(よむ)際に鳴らす仏具の1つです。一方で、一般のご家庭では、お仏壇に手をあわせる際やお供えものをする際など、本来の用途以外にも、いろいろなタイミングで鳴らされているようです。
お仏壇の中でのおりんを飾る位置ですが、お仏壇の下段についている「膳引(ぜんびき)」と呼ばれる引っ張り出せる棚の上や、お仏壇の外側の右前など、おりんを鳴らしやすいお手元に近い位置に置いていただきます。
浄土真宗ではお水やお茶はお供えしないのが基本
正式な浄土真宗のお仏壇の飾り方では、お水やお茶はお供えしません。
なぜなら、浄土真宗では「極楽浄土には癒しの水が豊かに湧き出ている」と考えられているためです。
一方で、一般のご家庭では、ご家族やお仏壇をお守りしている方のお気持ちで、お水やお茶を供えられている場合もあります。
浄土真宗のお仏壇の基本の飾り方とは
以上が、どのような仏壇の種類を選んでいただいても共通する、浄土真宗のお仏壇の基本の飾り方です。
「お仏壇には、どんな仏具が必要だったかな。」
「この仏具は、お仏壇のどの位置に置いたらよかったかな。」
ふと思われた際には、参考にしていただければ幸いです。また悩まれた際には、お寺様にご相談していただくか、私たち若林佛具製作所へどうぞお気軽にお問い合わせ下さい。
はじめにも述べたとおり、現在お仏壇自体も多様化しているように、お仏壇の飾り方も多様化しています。
形式にとらわれ過ぎず、生かされていることへ感謝し、お仏壇に心を込めて手をあわせることを大切にしていただきたいと思います。